駒ヶ根市における長野県第3例目のセアカゴケグモ発見は、地元紙の『信濃毎日新聞』紙上にカラー写真付きで報道されました。
ここで注目されるのは、「おすは小さくて人をかめない」という記述です。これまで新聞紙上で、「毒があるのはメスだけ」という記述はしばしば見られましたが、このよう表現は初めて目にしました。実際のところ、ゴケグモ類のオスに毒はあるのでしょうか?
「『オスに毒はない』は誤り」と断言する研究者もおられました。実際にテストした例はないとも聞いています。
実験する人が現れないのは、特に応用部門の研究者にとって、この種の研究が生産性の低いものであることが考えられます。
メスと比べてはるかに小さなオスから毒腺を取り出すのは技術を要します。また、実験に使えるだけの分量を集めるのも手間がかかります。その上、結論はほぼ見えています。容易に予想できる「ゴケグモ類のオスに毒があったとしても、量が少なく、かつ牙がヒトの真皮に達しないため、害はない」が、「毒はあるが・・・」に変わるだけです。
これでは、労力と時間と費用、それに検体の生命を費やす意味が見いだせるかは疑問です。無論、事実を究明することには意義があると言えましょうが。
オスも毒がないと、獲物を捕獲するのが困難になるでしょうね。メスと同様な毒があるが、キバが小さくて、ヒトの皮膚をつらぬくことができないと思っていました。
kanaさんの観測は基本的に正しいと思います。
ただし、餌になる昆虫の神経を麻痺させる毒素とαラトロトキシンは別物です。節足動物と脊椎動物では神経伝達物質が異なりますから。
国立科学博物館の小野さんによると、セアカゴケグモが餌に咬みついても、相手は中々おとなしくならず、けっこう苦労しているそうです。伊丹昆虫館の奥山館長も同様な観察をされたそうです。
毒液にαラトロトキシンを多く含む分だけ、昆虫に効く毒素の保有量が少ないのかもしれませんね。
ゴケグモ類になぜ強い毒性があるのか、十分な説明はなされておりません。
捕食のためではないでしょう。
αラトロトキシンが哺乳類に対して、あれだけ強い毒性を示すのが、副次的な効果で、元々は別の意義があったのかもしれません。
もし、それが生殖に関わるものならば、オスにはαラトロトキシンを作る能力がないこともありえます。
医学者や衛生学者にとっては、「人体にとって、危険性があるか否か」が関心の的でしょうが、生物学者にとっては、別の方面への興味が湧くものです。
そういう観点で考えると、オスの毒性検査もやってほしいですね。