同種のメスがオスを喰ってしまうという行動は、残酷かつ衝撃的に受け止められやすく、その毒性とともに、世間に注目されたことは、想像に難くありません。
まず、前回も述べたように、肉食の小動物にとって、自分以外の個体は敵か餌です。クモのオスも通常は共喰いをします。
個体群の中でのオスの役目は、メスに精子を受け渡すことで、生殖行動を全うすれぼ、残りのじ寿命はほとんどありません。大往生したとすれば、死骸はそのまま朽ち果てるか、蟻の餌になるだけです。メスに喰われて、次世代の栄養になることは、種の観点からは、オスの身体を有効に利用することになります。
同様のケースはカバキコマチグモのメスにも見られます。本種のメスは産卵後は卵嚢を保護して、子グモが卵嚢を出る(出廬)まで見届けます。出廬した子グモたちは母親を襲って、身体を喰ってしまいます。メスは抵抗も、なすがままに任せるそうです。
今のところ、コマチグモ属の他の種では、この習性は確認されていません。
この事例が報告された時には、世界のクモがくしゃは一様に驚いたといいます。中には、「異常例ではないか」と考えた学者もあったようです。