交尾期にメスがオスを喰うという習性では、カマキリが有名です。しばしば、「男の悲哀」として語られますね。
クモの場合も似た習性が認められますが、喰われるのは主に交接(注)後です。肉食動物の場合、近づく者は敵か餌なので、反射的攻撃するのは 自然な行動と言えます。
これを防ぐために、オスは自分が仲間であることをメスに知らせる信号を発するケースがあります。オニグモ類では、オスがメスの網の外縁で糸を弾きます。一定の波動でメスを安心させるのだと思います。メスが警戒を解いているわずかな間に、オスは役目を果たすのですが、ボヤボヤしていると、我に帰ったメスの餌食になってしまいます。ゴケグモ類の場合も、これに類したパターンと思われます。
ウェブスター英語辞典のwidow spiderの項に「交接後にオスを喰う」習性が紹介されているので、ゴケグモ類特有と誤解されますが、本属だけのことではありません。
一般に造網性のクモは視覚があまり発達していないので、振動を利用しますが、徘徊性のクモ、特にハエトリグモ類は視覚が発達しているので、俗に「クモのダンス」と言われる行動をとります。オスがメスの前で第1脚を広げて、様々な姿勢を見せ、メスもこれに答えます。いわば、ボデーランゲージですね。(未完)
(注)クモは生殖行動の際に、生殖器同士を接触することはしません。このため、「交尾」という用語はあまり使われません。
オスの触肢(触覚器および腕に相当する器官)の先は膨らんでいて、オスは予めここにせいえきを貯めて、ここからメスに受け渡しします。接触時間を短縮するためでしょう。
従って、オスの本来の外部生殖器には穴が二つあいているだけですが、触肢の先には、オサムシやザトウムシ、カタツムリの陰茎同様の複雑な構造が発達しています。